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ボスコ通りの靴音 岡井美穂

随分、ブログアップサボってしまった…。そもそも、通勤移動が電車半分、クルマ半分になってからというもの、自身の活字離れを危惧して半ば強制(矯正?)的に再開したこのブログ、ここにきて「無理は禁物」などと失速してきたところは、なんとか乗り切らなくては。

岡井美穂さんを知ったのは、義母が切り盛りしていた小さなギャラリーで個展をされ、その陶芸作品に魅了されたのがきっかけ。その時に、本当は小品でもいいので作品を手に入れたかったのだけど、手が出なかった。
義母は今ではギャラリーを閉めてしまったが、リビングに幾つか岡井さんの陶器のオブジェが飾られていて、いつもお邪魔すると、いいなあなんて、しばらく眺めてる。

この本はそんな岡井美穂さんが、一念発起してイタリアへ留学され、あちらでの生活の徒然を綴った随筆。所々に、素敵なドローイングが挿入されている。この本の表紙絵も好きだなあ。
モノを生み出す人の話は面白い。其処にイタリアという国の文化の懐の深さも相まって、羨望の念を抱きながら複雑な気持ちでページをめくるハメになるのだ。

ボスコ通りの靴音 イタリア陶芸工房の町・ファエンツァより 岡井美穂 KKベストセラーズ刊
ISBN4-584-18507-7
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# by takuyai9 | 2017-01-30 00:09

フレップ・トリップ 北原白秋

「フレップの実は赤く、トリップの実は黒い。いづれも樺太のツンドラ地帯に生ずる小灌木の名である。採りて酒を製する。所謂樺太葡萄酒である」(文中より)
白秋の旅の様子を、独特のリズム感で軽やかに綴るこの作品は、ジャンル的には紀行文なんだろうけど、そんな枠にはまらない、実に自由さが、読んでてなんだか気持ちいい。

パラパラ読んでから、お風呂に浸かった。ことばの韻を反芻しながら、入浴剤の入った白濁した湯船で口元ブクブクしてたら、ふと、白秋が今の時代に生きていてショートメールなんかを家族とやりとりしたら、どんなことばを入力して、どんな絵文字を使うんかななんて、どうでも良い想像が働いたのは楽しかったな。文中で旅に出かけるその際に、家族と白秋が電報をやりとりする場面があって、その短い短文の邂逅の中に、共通のユーモアと思いやりが見て取れるのは、時代なんて関係ないなって月並みだけど思わされる。

そうだ、今度北陸へ電車旅する時のお供に、この本を持って行こう、そう思いついたところでそろそろ瞼が重くなってきたので、おやすみなさい。

フレップ・トリップ 北原白秋 岩波文庫刊
ISBN978-4-00-310487-3
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# by takuyai9 | 2017-01-24 00:36

中川ワニ ジャズブック 中川ワニ

表紙絵を描いているタダジュンさんの絵に惹かれて手に入れた一冊。中川ワニさんが珈琲の焙煎業を生業にしているのは知ってたけど、用事のない休日に珈琲飲みながらパラパラ開いたページを摘み読みしたらイイ感じかなって想像が働いたので、この本欲しくなった。
僕の音楽の原体験は、父親のデンと据えたテクニクスのレコードプレーヤーだった。ターンテーブルには夕食どきにポールモーリア楽団やオスカーピーターソンが乗った。TVからは海外ウィークリーで幸田シャーミンが始まったばかりのMTVのPVや、YMOの海外公演なんかを華やかに紹介していた。
僕の住んでいた村にはレコード屋なんて全然無くて、中学生の時、初めて電車で隣町の貸しレコード屋を友達に連れられて通ったのが、強く記憶に残ってる。ピンクフロイドとか、キングクリムゾンとか、音楽もそうだけどレコードジャケットのアートワークがとても衝撃的だった。
カセットテープからCDへ移行する潮目は、淋しくもあり反発もあったけど、その頃には友人たちに影響されながら聴いていた自分の音楽感に疑問を持って、本当に好きなものをマイペースに楽しもうとCDショップに通い始めたのを覚えてる。
でも、そんな日々も今は昔、ネット配信が当たり前の現在はitunesの画面に反映されたアルバムのアートワークを老眼鏡をかけて目を凝らして見ている自分に、時の流れを改めて感じるな。
コレは本のカタチをとった一冊(一枚)のアルバム。
聴きたい(読みたい)ページに針を落として、珈琲片手にソファで摘み読みが、よく似合う。

中川ワニ ジャズブック 中川ワニ (あうん堂本舗)
ISBN978-4-9901590-4-7
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# by takuyai9 | 2017-01-22 22:06

未来のだるまちゃんへ かこさとし

昨日は疲労感が半端なくて、投稿サボっちゃった。気がついたら、自動的にベッドに潜り込んで目を閉じた次第。その辺のオートメーション化はここのところ自己防衛としてよくできてるなと、我ながら感心。今朝は眠りから覚めて恨めしい気持ちで、外せない仕事で半日の休日出勤。
仕事を終えて家に帰ると、陽も西の空に随分傾きかけてレースのカーテン越しに差し込む光も時間を追って弱々しくなっていく。せめて、休日の残りを心安らかに過ごそうと、本を読む事にした。僕の寝室には手つかずでいずれ読もうと並べた未読の本棚がある。そこからの一冊が、今日の一冊。

かこさとしさんと言えば、誰もが一度はその作品に親しんだ事があるのでは?僕は、幼い頃に「カラスのパンやさん」や「どろぼうがっこう」を何度も何度も眺めていた記憶がある。「カラスのパンやさん」では、ページ一面にビッシリ描かれた創作パンの数々に、どれが食べたい、どれが好きかと、恐らく本を見たみんながしたであろうワクワクを親と共有したし、「どろぼうがっこう」は、声色を変えながら朗読して楽しかった思い出がある。今、改めて見返すと、こどもの好奇心や奔放さになんて寄り添った本なんだろうと、納得してしまう。

この「未来のだるまちゃんへ」を読むと、戦中戦後を生きてきた作者の、作品に込められたメッセージを想わずにはいられない。そこには児童書の枠を超えた、人間の悲喜こもごもが集約されて、本書の読後は改めて作品に違った味わいを持たせてくれる。
かこさとし作品に触れた全ての人に、ぜひこの本も読んでほしい。どう感じるかは、自身で感じるしかない。
88歳のかこさとしさんの笑顔は、優しかった。

未来のだるまちゃんへ かこさとし 文藝春秋刊
ISBN978-4-16-390054-4
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# by takuyai9 | 2017-01-19 21:48

食いしんぼグラフティー 玉村豊男

「空腹は最高のソースである、とフランスの諺にある…」そんな豊男ちゃんは空腹がコワイときた。
ウチではもっぱら豊男本と親しみを込めて呼ばれ、一時期ホント、ハマってよく読んでたなあ。
ヴィラデスト(玉村豊男さんがオーナーのワイナリー)にも行ってみたい。

ヴィラデスト創設以前、もうすぐ40代に差しかかろうとする筆者の食いしんぼ武者修行記、初版は1989年。
久しぶりに読み返したら、やっぱり面白いな。そして美味そうな食べ物の話、しきり。
エッセイというジャンル、読み漁ったのも豊男本がきっかけだったのかな?

食いしんぼクラフティー 玉村豊男 (文春文庫刊)
ISBN4-16-732204-8
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# by takuyai9 | 2017-01-18 23:00